知らないとマズい「新リース会計基準」の基本。適用対象や例外処理をQ&Aでやさしく解説

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2020年4月1日以降に適用が開始された「新リース会計基準」は、多くの企業にとって財務報告や経営戦略に大きな影響を与える重要な変更点です。従来の基準とは異なり、リース契約の会計処理が大きく見直されたことで、知らないままでは企業の財務状況が正しく評価されなかったり、思わぬ実務上の負担が増大したりする可能性があります。この記事では、新リース会計基準の概要から、なぜ「知らないとマズい」のかという理由、適用対象となる企業や契約、リース資産のオンバランス化が財務諸表に与える具体的な影響、さらには少額リースなどの例外処理まで、複雑な内容をQ&A形式も交えてわかりやすく解説します。この記事を読めば、新基準の全体像を把握し、自社で適切な対応を検討するための基礎知識とヒントが得られます。

目次

新リース会計基準とは?なぜ「知らないとマズい」のか

企業経営において、会計基準の変更は時に大きなインパクトをもたらします。特に、近年適用が開始された「新リース会計基準」は、多くの企業の財務諸表にこれまでなかった大きな変化をもたらすため、その内容を正確に理解しておくことが不可欠です。「知らない」では済まされない、企業経営の透明性と健全性に直結する重要な変更点が多数含まれています。本章では、この新リース会計基準の概要と、なぜ今、これほどまでに注目され、理解が求められているのかを分かりやすく解説します。

新リース会計基準の概要と目的

新リース会計基準とは、リース取引の会計処理に関する新たなルールを指します。日本においては、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」がこれに該当します。この基準の導入は、国際的な会計基準である国際財務報告基準(IFRS)との整合性を高めることを目的としており、リース取引の経済的実態をより正確に財務諸表に反映させることに主眼が置かれています。

具体的には、これまで賃貸借処理(オフバランス処理)が可能であった一部のリース取引(特にオペレーティングリース)についても、原則として資産と負債を計上する「オンバランス処理」を義務付ける点が最大の特徴です。これにより、企業の真の財政状態や経営成績がより明確に開示されることになります。

この基準が導入された主な目的は以下の通りです。

  • 財務諸表の透明性の向上: リースによって実質的に利用している資産や、それに伴う将来の支払い義務が財務諸表に計上されることで、企業の財政状態がより正確に把握できるようになります。
  • 企業間の比較可能性の向上: リース取引の会計処理が統一されることで、リースを多用する企業とそうでない企業、あるいは異なる会計基準を採用する企業間での財務状況の比較が容易になります。
  • 投資家や債権者への情報提供の充実: 企業の負債の実態がより詳細に開示されるため、投資家や金融機関はより適切な投資判断や融資判断を下せるようになります。

従来のリース会計基準との主な違い

新リース会計基準を理解する上で、従来のリース会計基準との違いを把握することは非常に重要です。特に大きな変更点は、オペレーティングリースの会計処理にあります。

従来の日本基準では、リース取引は大きく「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」に分類され、それぞれ異なる会計処理が適用されていました。

  • ファイナンスリース: リース期間の満了時にリース物件の所有権が借手に移転するか、または移転しない場合でも、実質的に所有権が借手にあると認められるリース取引です。従来の基準でも、原則として売買処理に準じて、リース資産とリース債務を貸借対照表に計上する(オンバランス処理)必要がありました。
  • オペレーティングリース: ファイナンスリース以外のリース取引を指し、多くの場合、賃貸借処理に準じて、リース料を費用として処理する(オフバランス処理)ことが可能でした。つまり、リース物件は貸借対照表に資産として計上されず、将来のリース料の支払い義務も負債として計上されませんでした。

新リース会計基準では、このオペレーティングリースについても、原則としてファイナンスリースと同様にオンバランス処理が求められるようになります。これにより、貸借対照表に「使用権資産」と「リース負債」が計上されることになります。

従来の基準と新基準の主な違いを以下の表にまとめました。

項目 従来のオペレーティングリース会計 新リース会計基準(原則)
資産計上 なし(オフバランス) 使用権資産として計上
負債計上 なし(オフバランス) リース負債として計上
損益計算書 リース料(費用) 減価償却費(使用権資産)+支払利息(リース負債)
キャッシュフロー計算書 営業活動によるキャッシュフロー(リース料の支払い) 投資活動によるキャッシュフロー(使用権資産の取得)+財務活動によるキャッシュフロー(リース負債の返済)
財務諸表への影響 負債比率が低く見える 負債比率が増加、総資産が増加

新リース会計基準の適用対象と適用時期

新リース会計基準の適用対象とポイント IFRS(国際財務報告基準) ▼ 適用対象 IFRSを適用している全企業 ▼ 適用開始時期 2019年1月1日以後の事業年度 (早期適用も実施済み) 会計処理の原則 オンバランス処理 (使用権資産・リース負債の計上) 日本基準(J-GAAP) ▼ 現行の取り扱い 上場・大会社等 オンバランス 中小企業等 賃貸借処理OK ▼ 将来の動向 IFRS第16号に準拠した 新基準の導入を検討中 ※時期未定 経過措置(適用初年度) 1 遡及適用(完全遡及法) 過去の財務諸表も含めて修正する 2 修正遡及適用(修正アプローチ) 過去分は修正せず、累積影響額を 期首残高で調整(多くの企業が採用)

「新リース会計基準」という言葉は、主に国際財務報告基準(IFRS)におけるリース会計の変更、具体的にはIFRS第16号「リース」を指すことが一般的です。しかし、日本基準においても将来的に同様の変更が検討されており、その動向は多くの企業にとって無視できないものとなっています。ここでは、この新リース会計基準がどのような企業に、いつから適用されるのかを詳しく解説します。

適用される企業の種類と条件

新リース会計基準の適用対象は、企業が採用している会計基準によって異なります。大きく分けて、国際財務報告基準(IFRS)を適用している企業と、日本基準を適用している企業に分類されます。

IFRS(国際財務報告基準)適用企業

IFRSを適用しているすべての企業は、IFRS第16号「リース」の適用対象となります。これは、金融商品取引法に基づきIFRSを任意適用している上場企業や、海外子会社でIFRSを適用している企業などが該当します。IFRS第16号では、後述する少額リースや短期リースといった特定の例外を除き、ほとんどすべてのリース契約について貸借対照表に「使用権資産」と「リース負債」を計上する「オンバランス処理」が求められます。

日本基準適用企業

日本基準を適用している企業は、現状では企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」に従います。現行の日本基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引について、中小企業等を中心に賃貸借処理(オフバランス処理)が認められています。しかし、将来的には企業会計基準委員会(ASBJ)がIFRS第16号に準拠した会計基準の導入を検討しており、その際には適用対象が拡大する可能性があります。

特に、以下のような企業は、現行の日本基準においてもファイナンス・リース取引をオンバランス処理する必要があります。

  • 金融商品取引法の適用を受ける上場企業およびその子会社: 連結財務諸表作成にあたり、原則としてオンバランス処理が求められます。
  • 会社法上の大会社: 資本金5億円以上または負債総額200億円以上の企業。
  • 会計監査人設置会社: 監査対象となる企業。

一方で、会社法上の大会社に該当しない中小企業や、会計監査人の設置義務がない企業では、引き続き賃貸借処理が認められるケースが多くあります。ただし、金融機関からの融資審査やM&A(企業の合併・買収)を検討する際には、実質的にオンバランス処理された財務情報が求められることもあるため、自社の状況に応じた会計処理の選択が重要となります。

適用開始時期と経過措置

新リース会計基準の適用開始時期は、採用している会計基準によって異なります。また、適用にあたっては、過去の契約に対する特別な処理(経過措置)が認められています。

IFRS第16号の適用開始時期

IFRS第16号「リース」は、2019年1月1日以後開始する事業年度から強制適用されています。これにより、IFRSを適用している企業は、この期日以降の財務諸表から新しい基準に基づいたリース取引の会計処理を行う必要があります。早期適用も認められていたため、一部の企業ではそれ以前からIFRS第16号を適用していました。

日本基準の動向と将来的な適用時期

現行の日本基準は、2008年4月1日以後開始する事業年度から適用されています。しかし、企業会計基準委員会(ASBJ)は、IFRS第16号とのコンバージェンス(収斂)に向けて、新たなリース会計基準の導入を検討しています。具体的な適用時期はまだ決定されていませんが、IFRSに準拠した基準が導入されれば、日本基準適用企業も新たな適用開始時期に備える必要があります。

経過措置について

新リース会計基準の導入にあたっては、適用初年度の負担を軽減するための経過措置が設けられています。IFRS第16号では、主に以下の2つの方法が認められています。

経過措置の種類 内容 特徴
遡及適用(完全遡及法) 適用初年度の期首において、過去のリース契約を遡って再評価し、比較情報を含むすべての過去期間の財務諸表を修正します。 比較可能性が高まる一方で、過去の財務諸表の修正が必要となり、実務上の負担が大きくなります。
修正遡及適用(修正アプローチ) 適用初年度の期首において、過去のリース契約を再評価し、使用権資産とリース負債を計上しますが、比較情報(前年度の財務諸表)は修正しません。累積的影響額は期首の利益剰余金に調整されます。 実務上の負担が軽減されるため、多くの企業がこの方法を選択しました。適用初年度の財務諸表のみが新基準で作成されます。

また、適用初年度において、特定のリース契約(例:短期リースや少額リース)については、遡及的な再評価を免除する簡便法を選択することも可能です。日本基準が将来的に改訂される際も、同様の経過措置が設けられることが予想されますので、最新の動向を注視し、自社にとって最適な適用方法を検討することが重要です。

新リース会計基準で何が変わる?会計処理のポイント

新リース会計基準:貸借対照表(B/S)への影響 今回追加される項目 【従来】オペレーティングリース 資産 負債 純資産 リース契約はオフバランス (B/Sに計上されない) 原則オンバランス化 【新基準】 資産 負債 純資産 使用権資産 (資産の増加) リース負債 (負債の増加) 資産・負債が両建てで計上される 財務指標への主な影響: 総資産・総負債の増加 → 自己資本比率の低下 総資産の増加 → ROA(総資産利益率)の低下 有利子負債の増加 → D/Eレシオの悪化

新リース会計基準の導入は、企業の会計処理と財務報告に根本的な変革をもたらします。特に、これまでオフバランス処理が可能だったリース契約が原則としてオンバランス化される点が最大の変更点であり、企業の財務諸表や経営指標に多大な影響を与えることになります。ここでは、その具体的な変更点と、企業が直面する会計処理上のポイントを詳しく解説します。

リース資産のオンバランス化とは

「オンバランス化」とは、これまで企業の貸借対照表(バランスシート)に計上されていなかったリース契約に基づく資産と負債を、貸借対照表上に認識し、計上することを指します。

従来のリース会計基準では、ファイナンスリース取引は原則としてオンバランス処理が求められていましたが、オペレーティングリース取引は、賃貸借契約として処理され、リース料が支払われるたびに費用として計上される「オフバランス処理」が一般的でした。このため、多額のリース資産を保有していても、それが貸借対照表に反映されず、企業の実態が把握しにくいという問題が指摘されていました。

新リース会計基準では、ほとんどすべてのリース契約について、企業はリースした資産を「使用権資産」として、リース料の支払義務を「リース負債」として、それぞれ貸借対照表に計上することが求められます。これにより、企業の資産・負債の実態がより正確に財務諸表に反映され、投資家や債権者にとって透明性の高い情報提供が可能になります。

具体的には、リース開始日に、リース料総額を適切な割引率で現在価値に割り引いた金額を、使用権資産とリース負債として計上します。その後、使用権資産は減価償却され、リース負債は元本と利息に分けて返済処理が行われます。

財務諸表への具体的な影響

リース資産のオンバランス化は、企業の主要な財務諸表である貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の全てに影響を及ぼします。また、それに伴い、企業の財務指標にも変化が生じます。

貸借対照表(B/S)への影響

新リース会計基準の適用により、貸借対照表には以下の変更が生じます。

  • 資産の増加:「使用権資産」が新たに計上されます。これは、有形固定資産や無形固定資産に準ずる科目として表示されることが一般的です。これにより、企業の総資産が増加します。
  • 負債の増加:「リース負債」が新たに計上されます。これは、有利子負債に準ずる科目として表示され、企業の総負債が増加します。

結果として、総資産および総負債が膨らむため、自己資本比率の低下や、負債比率(D/Eレシオ)の悪化といった財務指標への影響が懸念されます。

損益計算書(P/L)への影響

損益計算書では、従来のオペレーティングリース料が「リース料」として一括で費用計上されていたのに対し、新基準では以下の費用に分解されます。

  • 減価償却費:使用権資産の償却費用として計上されます。
  • 支払利息:リース負債に係る利息費用として計上されます。

この変更により、損益計算書上の費用計上パターンが変化します。特に、リース期間の初期には利息費用が大きく計上されるため、費用が前重りになる傾向があります。これにより、リース期間の初期は営業利益が減少し、経常利益も影響を受ける可能性があります。

キャッシュフロー計算書(C/F)への影響

キャッシュフロー計算書においても、費用計上の変化に伴い分類が変更されます。

  • 従来のオペレーティングリース料の支払いは、原則として営業活動によるキャッシュフローに分類されていました。
  • 新基準では、リース負債の元本返済部分は財務活動によるキャッシュフローに分類されます。
  • 利息の支払部分は、営業活動によるキャッシュフローまたは財務活動によるキャッシュフローのいずれかに分類されます(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に基づき、原則として営業活動によるキャッシュフロー)。

この変更により、営業活動によるキャッシュフローが増加し、財務活動によるキャッシュフローが減少する傾向が見られます。これは、企業のキャッシュ創出能力を評価する上で、より実態に近い情報を提供することにつながります。

財務指標への影響まとめ

新リース会計基準が財務指標に与える主な影響は以下の通りです。

財務指標 新リース会計基準導入後の変化 詳細
総資産 増加 使用権資産の計上により、資産規模が拡大します。
総負債 増加 リース負債の計上により、負債規模が拡大します。
自己資本比率 低下の可能性 総資産と総負債の増加により、自己資本比率が低下する可能性があります。
負債比率(D/Eレシオ) 悪化の可能性 リース負債が有利子負債に準ずる扱いとなるため、負債比率が悪化する可能性があります。
ROA(総資産利益率) 低下の可能性 総資産が増加するため、ROAが低下する可能性があります。
営業利益 変化(初期は減少傾向) リース期間の初期は減価償却費と支払利息の合計が従来のリース料より大きくなるため、営業利益が減少する可能性があります。
営業活動によるキャッシュフロー 増加の可能性 リース負債の元本返済部分が財務活動に分類されるため、営業活動によるキャッシュフローが増加する可能性があります。

これらの変化は、特に財務指標を重視する投資家や金融機関にとって重要な情報となります。企業は、これらの指標の変化を正確に把握し、適切に説明する準備が必要です。

リース契約の見直しと実務上の課題

新リース会計基準の導入は、会計処理だけでなく、企業のリース契約戦略や実務運用にも大きな影響を与えます。企業は、多岐にわたる課題への対応が求められます。

リース契約の識別と評価の複雑化

新基準では、契約がリースであるかどうかの識別がより厳密になります。特定の資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかが判断の鍵となり、サービス契約との区別が重要です。また、リース期間の算定やリース料の構成要素(変動リース料、残価保証など)の評価、さらにはリース料の現在価値を計算するための適切な割引率の決定など、専門的な判断と複雑な計算が求められます。

既存契約の見直しと契約戦略の変更

すでに締結しているオペレーティングリース契約についても、新基準に基づき会計処理を見直す必要があります。これにより、これまでオフバランスだった契約がオンバランス化されるため、契約ごとの影響を把握し、必要に応じてリース会社との契約条件の見直し交渉も視野に入れる必要があります。

また、将来的な設備投資において、リースと購入、レンタルといった調達手段の選択に変化が生じる可能性があります。財務諸表への影響を考慮し、最適な調達戦略を再構築することが重要です。

システム対応とデータ管理の必要性

リース契約のオンバランス化に伴い、契約情報の管理、会計処理、財務諸表への反映、開示情報の作成など、新たなシステム対応が不可欠となります。多数のリース契約を抱える企業では、手作業での対応は現実的ではありません。

  • リース契約情報を一元的に管理し、リース期間、リース料、割引率などの詳細データを正確に保持するデータベースの構築。
  • リース負債の現在価値計算、減価償却費と支払利息の自動計算、仕訳の自動生成といった会計処理機能の導入。
  • 既存の固定資産管理システムや会計システムとの連携。
  • 財務諸表注記に必要な開示情報を自動で集計・作成する機能。

これらの要件を満たすためには、リース会計に特化したソリューションの導入や、既存システムの改修が求められます。適切なシステムを選定し、導入を進めることが、新基準へのスムーズな移行には欠かせません。

社内体制とプロセスの整備

新リース会計基準への対応は、経理部門だけでなく、設備投資を行う事業部門、法務部門など、複数の部門にまたがることになります。リース契約の締結から会計処理、開示に至るまでの一連のプロセスを見直し、部門間の連携を強化する必要があります。

また、新たな会計処理に関する社員への教育と研修も重要です。特に、リース契約の識別や評価に関する専門知識を持つ人材の育成が求められます。外部の専門家(会計士など)の知見を活用することも有効な手段となるでしょう。

知っておきたい新リース会計基準の例外処理

新リース会計基準:例外処理と特殊なケース 例外処理 (実務負担の軽減) 短期リース リース期間が12ヶ月以内 ! または 少額リース 重要性が乏しい (例: 5,000ドル以下) ! オンバランス不要 賃借料として費用処理 特殊なケースの取り扱い ① 転貸リース 原契約:使用権資産と負債を計上 転貸契約:貸し手として債権計上 ② セール・アンド・リースバック 売却要件を満たすか判定が必要 満たさない場合=金融取引として処理 ③ 変動リース料 指数・レート連動:負債に含める 業績連動(売上等):発生時費用処理 ④ 構成要素の分離 リース部分と非リース(保守等)を分離 ※簡便法で一体処理も可能

新リース会計基準は、原則としてすべてのリース契約をオンバランス化し、使用権資産とリース負債を計上することを求めていますが、実務上の負担を軽減するため、いくつかの例外処理が認められています。これらの特例を適切に理解し適用することで、企業の会計処理をより効率的に進めることができます。

少額リースと短期リースの特例

新リース会計基準では、リース資産の金額が重要性の乏しいもの(少額リース)、またはリース期間が短いもの(短期リース)については、原則的な会計処理を適用せず、簡便な方法で処理することが認められています。これにより、企業はすべてのリース契約に対して詳細な評価や計上を行う実務負担を軽減できます。

少額リースの特例

少額リースとは、個々のリース資産の価値が重要性に乏しいと判断されるリースを指します。日本の会計基準においては、IFRS第16号「リース」の規定を参考に、「重要性の乏しいリース」として同様の取り扱いが認められています。IFRS第16号では、新規のリース契約の対象となる基礎となる資産の価値が5,000米ドル相当額以下を目安としていますが、日本の会計基準では具体的な金額基準は明示されていません。各企業は、自社の重要性基準に基づいて判断することになります。

この特例が適用される場合、リース料はリース期間にわたって定額法その他の合理的な方法により費用として処理され、使用権資産やリース負債を計上する必要はありません。これにより、財務諸表への影響を抑えることができます。

短期リースの特例

短期リースとは、リース開始日においてリース期間が12ヶ月以内であるリースを指します。この特例は、リース期間が非常に短いため、オンバランス化による情報提供のメリットが実務上の負担を上回らないという考えに基づいています。

短期リースの特例が適用される場合も、少額リースと同様に、リース料はリース期間にわたって定額法その他の合理的な方法により費用として処理され、使用権資産やリース負債は計上されません

これらの特例を適用する際には、同一または類似のリースを意図的に分割して特例を適用することは認められません。また、特例を適用するか否かは、リースごとに判断するのではなく、基礎となる資産の種類ごとに一貫した会計方針として適用する必要があります。

特例の種類 適用要件 会計処理 主な目的
少額リース リース資産の価値が重要性に乏しいもの(IFRS 16では5,000米ドル相当額以下が目安) リース料を発生時に費用処理(オンバランス不要) 実務負担の軽減
短期リース リース開始日においてリース期間が12ヶ月以内のもの リース料を発生時に費用処理(オンバランス不要) 実務負担の軽減

転貸リースなど特殊なケースの取り扱い

リース取引には、通常のリース契約以外にも、複数の当事者が関与したり、契約内容が複雑であったりする特殊なケースが存在します。これらの取引についても、新リース会計基準では具体的な取り扱いが定められています。

転貸リース

転貸リースとは、ある企業がリース会社から資産を借り受け、その資産をさらに別の企業に貸し出す取引を指します。この場合、転貸する企業(転貸人)は、リース会社(原リース人)から見れば借り手(原借手)であり、別の企業(転借人)から見れば貸し手(転貸人)となります。

転貸人は、原リース人との契約については、新リース会計基準に従い使用権資産とリース負債を計上します。一方、転借人との契約については、自らが貸し手となるため、リース債権を計上することになります。この際、転貸人が実質的にリスクと経済的便益のほとんどを移転している場合はファイナンス・リース、そうでない場合はオペレーティング・リースとして処理されます。

セール・アンド・リースバック

セール・アンド・リースバック取引とは、企業が所有する資産を第三者に売却し、同時にその資産を売却先からリース契約により借り受ける取引です。この取引は、資金調達の手段として利用されることが多くあります。

新リース会計基準では、まず資産の売却が「販売」として認識されるか否かを判断します。販売として認識される場合、売却側(元の所有者)は、売却損益を認識し、売却後にリース契約に基づき使用権資産とリース負債を計上します。売却が販売として認識されない場合、その取引は金融取引として扱われ、資産の売却は認識されず、受領した対価は金融負債として処理されます。

変動リース料

変動リース料とは、リース契約において、リース料が固定されておらず、将来の特定の事象や状況に基づいて変動するリース料を指します。例えば、売上高に連動するリース料や、使用量に応じて変動するリース料などがこれに該当します。

新リース会計基準では、指数やレートに連動する変動リース料は、リース負債の当初測定に含められますが、それ以外の変動リース料(例:売上高に連動するもの)は、原則としてリース負債の当初測定には含めず、発生時に損益計算書で費用として認識されます。これは、後者の変動リース料が将来の不確実な事象に依存するため、リース開始時点での見積もりが困難であるためです。

リース構成要素と非リース構成要素の分離

リース契約の中には、資産の利用権(リース構成要素)と、メンテナンスサービスや保険などの付帯サービス(非リース構成要素)が一体となっているものがあります。新リース会計基準では、原則としてこれらの構成要素を分離して会計処理することが求められます。

企業は、リース契約に含まれるリース構成要素と非リース構成要素を識別し、それぞれに独立した価格を配分します。リース構成要素については、原則通り使用権資産とリース負債を計上し、非リース構成要素については、発生時に費用として処理するなど、それぞれの性質に応じた会計処理を行います。ただし、簡便法として、非リース構成要素をリース構成要素と一体として処理することも認められる場合があります

新リース会計基準に関するよくある質問Q&A

新リース会計基準の導入にあたり、多くの企業から寄せられる疑問や懸念事項について、Q&A形式でわかりやすく解説します。基準の基本的な内容から実務上の課題まで、網羅的に理解を深めていきましょう。

Q1 リースとレンタルの違いは?

リースとレンタルは、どちらも資産を借りて利用する点では共通していますが、会計処理や契約内容において明確な違いがあります。特に新リース会計基準の適用対象となるのは「リース」契約であり、レンタルは対象外となるため、その違いを正確に理解することが重要です。

主な違いを以下の表にまとめました。

項目 リース(ファイナンス・オペレーティング問わず) レンタル
契約期間 比較的長期(数ヶ月〜数年) 比較的短期(数日〜数ヶ月)
中途解約 原則として不可、または多額の違約金が発生 原則として可能(短期契約のため)
所有権 貸主(リース会社)に帰属 貸主(レンタル会社)に帰属
保守・修繕義務 通常、借主(ユーザー)が負担 通常、貸主(レンタル会社)が負担
会計処理(新基準) 使用権資産とリース負債を計上(オンバランス化) 賃借料として費用計上(オフバランス維持)
物件の選択 借主が選択し、貸主が購入して貸与 貸主が所有する物件から選択

この違いを理解することで、自社の契約が新リース会計基準の適用対象となるか否かを判断する第一歩となります。

Q2 新リース会計基準導入でコストは増える?

新リース会計基準の導入は、企業の会計処理や財務諸表に大きな影響を与えるため、様々な面でコストが増加する可能性があります。

主なコスト増加要因は以下の通りです。

  • 会計処理上のコスト増加

    • 減価償却費と支払利息の計上: 従来は賃借料として一括で費用計上されていたものが、使用権資産の減価償却費とリース負債に係る支払利息として別々に計上されるため、損益計算書の内訳が複雑化します。これにより、初期の費用計上額が増加する傾向があります。
    • 財務諸表作成コスト: 貸借対照表にリース負債が計上されることで、負債比率や自己資本比率などの財務指標が悪化する可能性があります。これにより、金融機関や投資家への説明責任が増し、資料作成などの手間が増えることが考えられます。
  • システム対応コスト

    • リース契約の情報を正確に管理し、使用権資産やリース負債を適切に計算するためには、新たな会計システムやリース管理システムの導入・改修が必要となるケースが多く、そのための費用が発生します。
  • 実務・人的コスト

    • リース契約の内容を詳細に把握し、会計処理に反映させるための業務フローの見直しや、従業員への教育・研修が必要となります。これには時間と労力がかかり、一時的に事務負担が増大します。
    • 特に、多数のリース契約を抱える企業では、契約情報の収集、評価、会計処理の実施に多大なリソースを要します。
  • コンサルティングコスト

    • 基準の解釈やシステム導入、業務フロー構築に関して、専門家(会計士、コンサルタントなど)の助言を求める場合、その費用が発生します。

これらのコストは、企業の規模やリース契約の数、既存システムの状況によって大きく異なりますが、新基準への移行には一定の投資が必要となることを認識しておく必要があります。

Q3 どのようなシステム対応が必要?プロシップのソリューションは?

新リース会計基準への対応には、リース契約の情報を網羅的に管理し、複雑な会計処理を自動化するためのシステム導入が不可欠となる企業が多くあります。特に、多数のリース契約を持つ企業や、国際会計基準(IFRS)を適用している企業にとっては、手作業での対応は現実的ではありません。

必要なシステム対応としては、主に以下の機能が求められます。

  • リース契約情報の集中管理

    • リース開始日、終了日、リース料、割引率、残存価額、契約変更履歴など、契約ごとの詳細情報を一元的に管理できる機能。
    • 国内外のリース契約を一元管理できるグローバル対応機能。
  • 使用権資産・リース負債の自動計算

    • 新基準に基づいた使用権資産の取得原価、減価償却費、リース負債の現在価値、支払利息を自動で計算し、仕訳を生成する機能。
    • リース期間中の契約変更(リース料の改定、期間延長など)にも柔軟に対応し、再測定を自動で行う機能。
  • 財務諸表・開示情報への連携

    • 計算された会計情報を既存の会計システムやERPシステムと連携し、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書へ反映させる機能。
    • 新基準で求められる注記情報(開示情報)を自動で作成・出力する機能。
  • シミュレーション機能

    • 新規リース契約や契約変更が財務諸表に与える影響を事前にシミュレーションできる機能。
    • 最適なリース戦略を検討するための分析機能。

日本国内において、リース資産管理システムを提供するベンダーとして「プロシップ」が広く知られています。プロシップが提供するようなソリューションは、上記の機能群を網羅しており、特に大規模な企業や複雑なリース契約を多数抱える企業にとって、新リース会計基準へのスムーズな移行と運用を支援する強力なツールとなります。

具体的には、リース契約情報の入力から、新基準に準拠した会計処理の自動化、財務諸表への連携、開示資料の作成支援まで、リース会計業務全般を効率化・正確化することを目指しています。これにより、企業の経理担当者の負担を軽減し、会計処理の透明性とコンプライアンスを向上させることが期待されます。

まとめ

本記事では、2025年4月1日以降に適用が開始される「新リース会計基準」について、その概要から適用対象、具体的な会計処理、そして知っておくべき例外処理までをQ&A形式で分かりやすく解説しました。

新リース会計基準の最大の特徴は、これまでオフバランス処理が可能だった多くのリース契約が、貸借対照表に「リース資産」と「リース負債」として計上される「オンバランス化」が原則となる点です。これにより、企業の財務諸表は大きく変化し、自己資本比率やROA(総資産利益率)といった財務指標にも影響を及ぼすため、経営戦略や資金調達にも影響が出ることが予想されます。

適用開始までにはまだ時間があるものの、適用対象となる企業は、自社のリース契約状況を正確に把握し、新たな会計処理に対応するための体制構築や、必要に応じて会計システムの改修、あるいは新たなソリューション導入の検討が不可欠です。早期の情報収集と準備が、スムーズな移行と事業への影響を最小限に抑える鍵となります。本記事が、新リース会計基準への理解を深め、適切な対応を進めるための一助となれば幸いです。

※記事内容は実際の内容と異なる場合があります。必ず事前にご確認をお願いします

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